劇場そのものが巨大な楽器――情熱で建てられたコロン劇場

アルゼンチンの首都・ブエノスアイレスの中心部に佇むコロン劇場 は、世界三大劇場のひとつとして知られています。

20世紀初頭、コロン劇場が建設された当時のアルゼンチンは、農産物の輸出によって世界有数の豊かさを誇っていました。1人あたりの国民所得は、ドイツ、フランス、オランダなど当時のヨーロッパ先進国を上回るほどだったといわれています。富裕層たちはこぞってパリへ渡り、華やかにお金を使いました。その豪快ぶりから、フランスでは「アルゼンチン人のように金持ち」という言葉まで流行したといわれています。コロン劇場は、そんな時代のアルゼンチンの繁栄と誇りを象徴する存在として誕生しました。

劇場は7階建て、立ち見を含め約3,000人を収容。館内には大理石の柱、直径7メートルのシャンデリア、ベネチアングラスの手すり、パリから運ばれたステンドグラス、そして金箔で彩られた「黄金の間」など、息をのむほど豪華な装飾が施されています。まさに「南米のパリ」と呼ばれたブエノスアイレスの美意識を体現した空間です。

しかし、この劇場の真価は、きらびやかな内装以上に“音”にあります。

コロン劇場は、「劇場そのものが巨大な楽器」と称されるほど、音響設計に優れています。巨大な空間でありながら音が痩せることなく、人の声や楽器の響きが驚くほど自然に広がります。U字型の構造、贅沢に使われた木材と石材、厚手のカーテンやカーペットによる音の調整、床下に設けられた共鳴構造――さらには客席の椅子に至るまで、すべてが“最高の響き”のために設計されています。

後方の席にいても、歌手の息遣いまで感じられるような「恐ろしいほどの解像度」は、世界的テノール歌手 ルチアーノ・パヴァロッティ をも魅了したといわれています。

音が空間に溶け込み、静かに消えていく――その瞬間が最も美しいとも称されるコロン劇場。訪れるには、公演を鑑賞するか、ガイドツアーに参加する方法があります。

もし観劇するなら、おすすめは1階中央席。演者を間近に感じながら、床下の空洞から伝わる“劇場の鼓動”を体感できます。一方、音響の完璧なバランスを味わいたいなら、天井付近に響きが集まる最上階席も格別です。左右の豪華なボックス席も魅力的ですが、純粋な響きを堪能するなら、やはり中央に近い席ほど理想的だといわれています。

歴史、建築、そして音――。
コロン劇場は、アルゼンチンという国がかつて抱いていた情熱と美意識を、今なお体感できる特別な場所です。ブエノスアイレスを訪れる際は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

コロン劇場公式HP https://teatrocolon.org.ar/

https://kitayama.trade/