アルゼンチンといえば、サッカー、ワイン、そしてタンゴは日本でもよく知られています。
2009年にユネスコ無形文化遺産として登録されたタンゴは、世界中で人々を魅了してきました。
ブエノスアイレスを歩くと、観光客向けに路上でタンゴパフォーマンスが見られます。劇場やレストランでディナーとワインと一緒にゆったりと楽しむこともできます。公共施設やカフェレストランなどでもよりカジュアルに市民が踊っている場面(ミロンガ)もあり、まさに国のシンボルにふさわしいダンス・音楽です。
その起源は、18世紀ラ・プラタ川流域の黒人奴隷のダンスや音楽がはじまりとされています。1853年の奴隷制度廃止、19世紀末の大量移民などの歴史の中で、キューバのハバネラ、アルゼンチン南部のミロンガ、ウルグアイのカンドンベなど様々なリズムが混ざり合い影響を与え形成されました。
1910年頃にバンドネオンが導入されると、タンゴの音楽性は変わり、それまでの陽気な音楽から、郷愁、情熱、悲哀といった人間の複雑な感情を表現するドラマチック・メランコリックなものになりました。酒場の娯楽として、単身ヨーロッパから渡った男性同士で故郷を思い、踊られました。その足の絡み合うような親密なダンスは、当時ヨーロッパで流行っていたワルツのような、離れて踊るスタイルから大きくかけ離れていたため、タンゴは下層階級のダンスと見なされ、上流社会からは嫌悪されていました。
しかし、同じ頃、ヨーロッパのミュージカルで披露されはじめ、パリの社交界で熱狂的なブームとなり、このヨーロッパでの名声が逆輸入される形で、ブエノスアイレスの上流階級もタンゴを認めはじめました。その後アメリカ、世界でも大流行し、今日まで愛されるダンスとなりました。
悲しみの中にもエレガンスと情熱を失わず、人間の本質的な感情を深く掘り下げているタンゴの力強さはワインとも調和します。タンゴを鑑賞しながらグラスを傾けてはいかがでしょうか。
